“おもてなし”の心をつなぐ
(朝日館 女将 辻芙美子さん)

かつて柏木は、大峰山の修行が盛んな頃に多くの大峰信仰の、講の人たちが柏木からの登山や大峰山からの下山の時に宿泊される拠点として多くの人で賑わっていました。
朝日館は明治14年(1881)に創業し、145年を迎える老舗旅館です。そこの女将さんである辻芙美子さんにお話をお聞きしました。

今も現役のかまどと真紀ストーブ
「私が嫁いできたのが昭和46年で、まだ講の方たちが多く泊まってくれていたので、毎日が忙しくて、主人のおばあさんに宿のことや昔の話を聞きながらあっという間に時が過ぎて行ったように思います」とおばあさんの話を思い返しながら話してくれました。
昭和40〜50年代は柏木商店街には米屋と魚屋が2軒ずつ、豆腐屋、理髪店、映画館もあって、柏木観光協会が行場でもある不動窟の営業を行っていました。
「いろんなお客様がお泊まりになってくださって、大台ヶ原で新種の昆虫を発見された方が、そのスケッチを贈ってくださり部屋の一室に飾っています」これはホシシリアゲムシで三宅恒方博士の逸話として残されています。また、登山家で有名な今西錦司博士が千五百山登頂記念の際に宿泊されています。

客室にさりげなく飾られていました
川上村周辺の自然に惹かれて人が集まる拠点でもあると感じました。
川上村の魅力はどんなところですか?と尋ねたところ、「最近外国の人が2泊、3泊してくださって、次の日吉野山の桜を見に行き、次の日は熊野の海へ片道2時間かけて行き、また戻って泊まってくれるのです。私らには考えられない行動で、聞いてみたところ、関空から2時間で秘境の村に来られて、そこから2時間圏内で海に行ける。素晴らしい、と言うんです」
朝日館の「ゆず羊羹」は有名なのですが、始めたきっかけやこだわりはありますか?
「これもおばあちゃんから教えてもらったのですが、お茶菓子に出す甘いものとして作ったものでして「うずら豆」か「トラ豆」を煮て皮をむいて、焚いて裏ごしして水出しして灰汁を抜きそれから寒天、砂糖を混ぜて作るので手間がかかっているのです。「ゆず羊羹は、10月から4月の間の期間限定で出していたのですが、お客さまにあることを教えてもらって、夏場のお茶菓子にも出せるようになったのです」

おばあちゃんの味を守る
これからの村は、朝日館はどうなりますか?
「今の山の風景を残せたら・・・」かつては大峰信仰で賑わいを見せた柏木、朝日館も大きく変わったが、人を魅了するものが何もないということではなく、何もないけどお客様が自分たちで楽しめる、そんなところであっていいのでは。という思いのように受け取りました。
お話を伺いに行ったとき宿の前で息子さんとお孫さんと一緒に散歩している時だったのですが柏木でも赤ちゃんの声を聞くのは何十年ぶりだとのこと、「私はもう引退です。息子たち若いものにあとは任せます」の言葉の中には、「おばあちゃんの話をもっと聞いとけばよかった」という思いを息子さんたちとは日頃話しする中で大事なものをちゃんと伝えているんだなと感じました。

「ここは2階ですよね」とお客様からよく聞かれるんです
かわかみ源流ツーリズムは川上村の魅力は、やはり「人」にあると思っています。。 朝日館の女将さんに会ってみたいと思う人が、きっといるように思います。
「田舎の人は他所から来た人にも優しく受け入れる心を持った人が多いわね」と女将さんが言われるように村民がガイドとなってみなさんをもてなす。みんなで村に来る人を迎えている村を目指していきたいと改めて思いました。

これからの季節は鮎などが楽しめる料理

昭和初期の「朝日館」




