吉野林業と地域の未来をつなぐ挑戦
(伐採ツアーガイド 㔟渡正丈(せどまさたけ)さん )( Kカネジュウ 代表 )
創業1963年の株式会社カネジュウで、川上村産の「吉野杉の磨丸太」を中心に社会に提供してきました。生まれ育ちは中奥。中奥川や家の近くの山が遊び場でした。そんな㔟渡正丈さんをご紹介します。
代々続く林家に生まれ、長男として自然な流れで吉野林業の道へ進みました。
「家業でしたから、継ぐことに迷いはありませんでした」と話す㔟渡さん。先代は昭和38年から磨丸太の製造販売を始め、長年にわたり吉野林業を支えてきました。しかし、住宅様式の変化によって床柱を使う家が減り、磨丸太の需要も大きく変化しています。そうした時代だからこそ、「川上の木そのものの価値を知ってもらい、評価してもらえる機会をつくりたい」という思いを強くしています。
昨秋ツアーでの伐採の様子
その取り組みの一つが、昨年夏から始めた樹齢約270年の吉野杉の大木を伐倒する奉納行事です。奉納演奏とともに大木を伐倒することで、吉野林業の迫力や伝統技術を多くの人に体感してもらう催しとして注目を集めています。
「大木を伐る技術は吉野林業の神髄です。しかし山林事業者は年々減少し、このままでは、その技術を受け継ぐ人がいなくなる時代が来るかもしれません。」現在、吉野で本格的に林業を営む人は一桁ほどにまで減少したといいます。それでも、すべてを残すことは難しくても、3分の1でも5分の1でも技術や文化を継承できればと、未来へ思いをつないでいます。
ツアー参加者へ吉野杉の説明
昨年夏の奉納行事には約250人、秋には約200人が来場し、村内外から多くの人が訪れました。特に村外からの参加者も多く、「これだけ多くの方に関心を持っていただけたことが何よりうれしい」と話します。今年はさらに来場者が増えることを期待し、「奉納演奏の舞台に立ってみたい」という声に応える特別企画や、特別観覧席の設置など、ツアー実施に向けても新たな楽しみ方も検討していただいています。また、多くの人が山を訪れる機会を活用し、山林での火気厳禁など森林保全の啓発にも力を入れていく考えです。
奉納演奏の様子(丹生川上神社上社太鼓保存会 龗)
㔟渡さんは、中学生から橿原で生活を送り、仕事を続けてきました。2年前にふるさとへ戻ったのは、「商売がひと段落したら、いつかは実家に戻ろう」と以前から決めていたからです。現在は中奥区の区長も務めています。人口減少や人手不足が進む地域で、「山の暮らしは苦労も多いですが、これまで地元にいなかった分、地域の皆さんの役に立ちたい」と話します。地域の困りごとにも積極的に取り組み、地域住民に寄り添った活動を続けています。
中奥川の清流
吉野林業の伝統を未来へつなぎ、地域の暮らしを支えていく。その思いを胸に、㔟渡さんは今日も中奥の山で新たな挑戦を続けています。










